口腔機能低下症
口腔機能低下症


口腔機能低下症は、口腔衛生、唾液分泌、噛む力、舌や口唇の運動、舌の力、咀嚼、嚥下など、複数の口腔機能が低下している状態です。
高齢者だけに生じるものではありません。中年期以降でも、歯の欠損、歯科疾患、全身疾患、服用薬、生活習慣などによって口腔機能が低下することがあります。
進行すると、食べられる食品の種類が限られたり、食事量が減少したりする可能性があります。口腔機能の低下は、栄養状態や全身の筋力、フレイル、サルコペニアなどとも関係するため、機能障害が明確になる前から評価・管理することが重要です。
これらは口腔機能低下症以外の疾患でも生じます。症状の有無だけでは診断できないため、口腔内診査と口腔機能精密検査を行います。
オーラルフレイルは、口腔機能が健常な状態と、明らかに低下した状態との間にある、口に関するささいな衰えを表す概念です。
一方、口腔機能低下症は、歯科医院で所定の検査を行い、診断基準に基づいて診断する疾患です。
口腔機能の軽微な変化に気づくことがオーラルフレイルへの対応であり、検査によって低下している機能を特定し、継続的に管理するのが口腔機能低下症の診療です。
口腔機能低下症の7つの下位症状のうち,3項目以上該当する場合に口腔機能低下症と診断されます。

日本老年歯科医学会HPより
舌の表面に付着している舌苔の範囲と厚み、または舌表面の微生物数を確認します。
視診によるTongue Coating Indexでは、舌表面を9つの区域に分けて評価し、舌苔の付着率が50%以上の場合に口腔衛生状態不良と判定します。
口腔水分計による口腔粘膜の湿潤度、または一定時間内の唾液分泌量を測定します。
口腔乾燥は、加齢だけでなく、服用薬、全身疾患、水分摂取量などの影響を受けます。
専用の検査機器によって歯列全体の咬合力を測定するか、機能している歯の本数によって評価します。
義歯を使用している場合は、原則として義歯を装着した状態で測定します。残存歯数で評価する場合は、機能する歯が20本未満で咬合力低下に該当します。
「パ」「タ」「カ」をそれぞれ連続して発音し、1秒間に発音できる回数を測定します。
「パ」は口唇、「タ」は舌の前方、「カ」は舌の後方の動きを主に評価します。いずれかが1秒間に6回未満の場合、舌口唇運動機能低下に該当します。
専用の舌圧測定器を使用し、舌で口蓋方向へ押す力を測定します。
最大舌圧が30kPa未満の場合、低舌圧に該当します。舌圧は、食べ物をまとめ、咽頭へ送り込む機能に関係します。
検査用グミを一定時間噛み、どの程度細かくできたかを専用機器またはスコアによって評価します。
機器を使用する方法では、グミから溶出したグルコース濃度を測定し、咀嚼能力を数値化します。
EAT-10や聖隷式嚥下質問紙などを用いて、食べ物や飲み物を飲み込む機能を評価します。
この検査は嚥下機能低下の可能性を調べるスクリーニングです。異常が認められた場合は、必要に応じて反復唾液嚥下テスト、改訂水飲みテスト、嚥下内視鏡検査、嚥下造影検査などの精密検査を検討します。
7つの評価項目のうち、3項目以上が基準値に該当した場合に、口腔機能低下症と診断します。
一つの機能だけを見るのではなく、複数の口腔機能を総合的に評価することが診断の特徴です。
検査結果は項目ごとに記録し、どの機能が低下しているのか、歯科治療や機能管理によってどの項目の改善を目指すのかを明確にします。
1
虫歯、歯周病、歯の欠損、噛み合わせ、義歯や被せ物の状態を確認します。あわせて、基礎疾患、服用薬、肺炎の既往、体重変化、食事内容、食事形態などを確認します。
2
7項目の口腔機能について、状態に応じた検査を行います。検査用グミを使用する検査などは、誤嚥・誤飲のリスクを確認したうえで実施の可否を判断します。

3
基準値に該当した項目だけでなく、歯科疾患、義歯、噛み合わせ、服用薬、栄養状態、生活習慣など、機能低下に関係する要因を分析します。
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検査結果に基づき、歯科治療、口腔衛生管理、機能訓練、食事・生活指導などを組み合わせた管理計画を立てます。すべての方に同じ口腔体操を行うのではなく、低下が認められた機能に応じて管理内容を決定します。
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管理計画に沿って経過を確認し、原則として概ね6か月ごとに口腔機能精密検査による再評価を行います。再評価によって変化を数値で確認し、管理内容の継続・変更を判断します。

歯、歯間部、舌、義歯など、汚れが残っている部位を確認します。
歯科医師・歯科衛生士による専門的な口腔衛生管理と、歯ブラシ、歯間ブラシ、フロス、舌清掃用具、義歯清掃用具などの選択・使用方法の指導を行います。
手指の運動に制限がある場合は、本人だけでなく家族や介助者を含めて清掃方法を検討します。
水分摂取量、服用薬、全身疾患、口呼吸など、口腔乾燥に関係する要因を確認します。
必要に応じて、口腔保湿剤、水分管理、口腔体操、唾液腺への刺激などを組み合わせます。服用薬の影響が疑われる場合は、自己判断で中止せず、必要に応じて医科の主治医へ照会します。
虫歯、歯周病、歯の欠損、義歯の不適合、被せ物の破損、噛み合わせなどを確認します。
必要に応じて、虫歯・歯周病治療、義歯の調整・修理・再製作、ブリッジやインプラントを含む欠損補綴治療を検討します。
一律に硬い食品を勧めるのではなく、歯と補綴装置の状態、咀嚼能力、嚥下機能に適した訓練や食事内容を選択します。
検査で低下していた「パ」「タ」「カ」の発音と、口唇・舌の動きを確認し、可動域訓練、発音訓練、抵抗訓練などを行います。
訓練内容と回数は、検査値と日常生活での支障に応じて設定します。
舌を口蓋方向へ押す抵抗訓練などを行います。
訓練前後の舌圧を測定し、数値の変化を確認しながら、負荷や回数を調整します。
歯や義歯による咬合支持の状態と、舌・口唇・顎の運動を含めて評価します。
必要な歯科治療を行ったうえで、咀嚼回数、食事形態、食品の選択、咀嚼訓練などを個別に検討します。
むせ、食後の声の変化、飲み込みにくさ、体重減少、肺炎の既往などを確認します。
嚥下障害が疑われる場合は、一般的な口腔体操だけで対応せず、専門的な嚥下機能検査や医科・歯科の専門医療機関への紹介を検討します。
口腔機能低下症では、歯の本数だけでなく、残っている歯がどのように噛み合っているか、義歯や被せ物が安定して機能しているかを評価する必要があります。
歯が残っていても噛み合わせが不安定な場合や、義歯が動く・痛む・外れやすい場合は、十分な咬合力や咀嚼能力を発揮できません。
当院では、補綴歯科の観点から、歯の欠損、義歯、ブリッジ、インプラント、被せ物、噛み合わせを一口腔単位で確認し、口腔機能検査の結果とあわせて治療計画を立てます。
口腔機能は、全身疾患、服用薬、身体機能、栄養状態などの影響を受けます。
意図しない体重減少、食欲低下、食事量の減少、食事形態の変化がある場合は、口腔機能だけでなく全身状態や栄養状態の評価が必要です。
必要に応じて、医師、管理栄養士、言語聴覚士などと情報を共有し、口腔機能、食事、栄養、全身状態を含めた管理につなげます。
